「導入事例って、よくあるA4ペラのあれでしょ?」・・・という会話。もちろんそれは事実ですが、真実ではありません。「よくあるA4ペラのあれ」の裏側には、“事例設計”という思想が不可欠。それが導入事例の成功を左右しているのです。
初めて事例を作る時も、今まで作ってきた事例を見直す時も・・・
導入事例制作に関わってもう10年以上になります。これだけ継続してオーダーをいただけるのは、事例制作が(特にBtoB企業の)マーケティング活動に欠かせないということを証明しています。
導入事例というものは、読者(=潜在顧客)の貴重な時間を3分~5分いただいて、文章と写真・図版の相乗効果で「製品の良さや信頼性」「既存導入顧客の満足度」「保守の充実」などをしっかり伝えなければなりません。
ここでキモになるのが、事例の“設計書”です。逆に言えば、1つのやり方、1つのフォーマットだけで、あらゆる事例制作に対応し、効果を最大化するのはほぼ不可能だと言えるでしょう。
事例の設計に必要な指標とは
それでは、事例の設計にあたっては、どんな指標があるのでしょうか?ざっと挙げただけでも以下のようなポイントを考慮し、フォーマットを設計する必要があります。
【導入製品の可視性】
その製品は手にとって見られる、触れられるモノでしょうか?それとも手に取ることはできないソフトウェアやソリューションでしょうか?それによって、「写真の多用が効果的か」「概念図の挿入が必須か」「動画で見せた方が早いか」など、まず見せ方の“スタイル”が全く変わってきます。一般的に、実物が手に取れる製品(例えばタブレットPCなど)であれば利用シーンなどのビジュアルが効果的ですし、逆に、販売管理システムなどのソフトウェアであれば、システム概念図や利用プロセスの図解などが有効です。
【顧客のリテラシー】
これは、事例を作る側の企業と、事例を読む側の潜在顧客の間のコミュニケーションの問題を指します。より分かりやすく言えば、潜在顧客の中でも「実際に製品・サービスを使う部門」と「製品の導入を決定する部門」が異なることはよくあります。導入事例はまず「製品の導入を決定する部門(あるいは人)」にとって、最も分かりやすい言葉で書かれていなければなりません。情シスは分るけど経営層には分からない言葉などは要注意です。「誰が最初に事例を読むのか」ここを考えないと、せっかくの原稿が無駄になります。
【ストーリーの深度】
ストーリーの深度とは、導入検討から実際の導入、効果測定、保守サポートにいたるまでの一連の流れを、どこまで1つの事例記事の中に落とし込むかです。ここを見極めないと「クドクドと同じことを言っている事例」や「肝心なところがあっさりしすぎて理解できない事例」になってしまいます。例えば「一目で使い方や効果が判る製品」であれば、文章も少な目に、写真や動画を多用して見せるのが効果的ですし、「カスタマイズや導入プロセスがシビアなソフトウェア」であれば、導入プロセス全体を丁寧に追っていく方が明らかに効果的です。
まだまだある事例の指標
以上3つの主な指標を挙げましたが、事例設計においては他にも【鮮度・頻度の管理】【導入目的別の適切な分類】など、多くの検討すべき指標があります。また、これらの指標は業種業界などによっても微妙に異なってきます。事例設計の勘所については、この「事例制作ログ」で継続的にお伝えできればと思います。
まとめ
- 導入事例は、数分で、いかに効率よく製品・サービスの価値を伝えられるかが勝負
- 事例の効果を最大化するには顧客像を明確にして最初の設計をすることが重要
- 指標にはまず【導入製品の可視性】【顧客のリテラシー】【ストーリーの深度】を考慮