5Gが流行れば不動産屋が儲かる

今日(2020年5月20日)のニュースに気になるのがありました。KDDIと三井不動産がタッグを組んで「5G対応」のオフィス不動産開発に乗り出すというものです(記事はこちら)。実は5Gの進展は、都市の不動産に新たな付加価値をもたらす可能性を秘めています。今回は“5Gが流行れば不動産屋が儲かる”という話です。

■5Gを備えたオフィスビルはスケールアウト自在な企業基地になる

コロナ禍の影響で、都心集中型の経済・ワークスタイルが崩れ去ろうとしています。湾岸のタワーマンションなども、その資産価値の下落が懸念されています。オフィスはどうでしょうか。テレワーク可能な業種では、「全員が出社してオフィスで定時勤務する」スタイルは、時代遅れと言われそうです。

今後はいわゆるABW(Activity Based Working)、「最も高い生産性を発揮するやり方・場所で個々の社員が働く」スタイルが是とされるでしょう。そうなったとき、都心のオフィスビルに求められるのは企業戦略に即応してスケールアウトできる能力です。オフィス拡大や移転のたびに無線LANを設定してサーバーを移設して・・・という手間がなく、高速・高信頼・多数同時接続の「オフィスビル5G網」によって、「必要なときに、万全のネットワークを備えたオフィスがすぐ使える」こと。これは今後都心のオフィスビル選定の重要要件となります。

有線配線が不要で、従来の無線LANよりも高速・高セキュリティのネットワークを実現する5Gはまさに「未来型オフィスビル」に必要な技術です。社員の利用だけではなく、例えばクライアントとWeb会議を一斉に行うようなシーンでも、オフィスビルの5Gインフラ整備は、ニーズが高まるでしょう。

■「マイクロデータセンター需要」で空き不動産が蘇る?!

もう一つ、5Gが不動産にもたらす価値としてひそかに注目されているのが、エッジコンピューティング施設の設置スペースとしての活用です。高速な5Gの特性を最大限に生かした処理を行うためには、従来のクラウドデータセンター経由のネットワークでは遅延が大きすぎます。そこで、活用フィールド内、またはその近隣に設置したMEC(モバイル・エッジ・コンピューティング)プラットフォームでの処理が必要になります。

MECはハードウエアですから、設置場所が必要になります。一方、いわゆる大規模データセンターほどの容積は必要としません。基地局とセットでも、ビルの空き部屋くらいで十分に収まります。都心では「更地」はほとんどないでしょうから、企業や自治体、教育機関が専用のMECを持ちたいと思ったときなど、近隣の空き不動産を取得あるいは賃貸して、MECプラットフォーム施設に改造するケースはあるでしょう。

また、楽天モバイルなど、そもそもMECプラットフォーム自体を全国都道府県に設置し、そのレンタルビジネスを展開する場合なども、何千か所という設置運用が必要ですから、この「マイクロデータセンター向け不動産」という市場は、今後注目です。駅から遠い、日当たりが悪いなど人が住むには不都合でも、コンピュータにとっては「非常に居心地のいい」部屋かもしれません。