導入事例取材における「質問案」の重要性

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導入事例の取材において必ず必要になるのが「質問案」です。質問案は、取材進行の流れを作る指針でもあり、原稿において漏れを無くすチェックリストでもあります。如何に事例の目的に会った質問案を用意できるかは、取材前の大切な準備になります。今回は「質問案」にスポットを当ててみましょう。

導入事例の4大質問とは?

質問案にも大分類、中分類、小分類があります。まず、導入事例においてはほぼ共通となる大分類の質問案はこうなります。

  • お客様の課題
  • 製品・サービス選定の理由
  • 導入効果
  • 今後の展望

少なくとも上記を押さえておけば、それなりの取材はできます。が、これだけですと、取材対象者からの答えがどのような形で返ってくるか予測が難しく、インタビュアー(ライター)に相当なスキルが要求されます。

そこで、もう一段階、ブレイクダウンした中分類の質問案も用意するのが一般的です。

導入事例質問案の中分類

質問案の中分類は、具体的には以下のようになります。

  • お客様の課題
    従来の業務においてはどのような課題がありましたか
    その課題の要因は何でしたか
    課題解決のためにいつ頃から検討を始めましたか
  • 製品・サービス選定の理由
    今回「〇〇(製品・サービス名)」を選定するに至った決め手はなんでしょうか
    選定の際、他社の製品を検討されましたか。その際、当社製品が優れていた点は何でしょうか
  • 導入効果
    製品・サービス導入後の定量的な効果について、具体的な数値でお聞かせください
    同じく定性的な効果について、現場の声などをお聞かせください
    その他、期待していた以上の効果があればお聞かせください
  • 今後の展望
    導入した「〇〇」について、今後の活用をお聞かせください
    その他、貴社ビジネス展望についてお聞かせください

このような質問案を用意し、事前に取材先にお渡ししておけば、「なるほど、効果については具体的な数字があると良いのだな」と、用意をしていただけますし、取材する側も、重要なキーワードを漏らさずヒアリングできるようになります。

さて、それでは質問案の小分類とは何でしょうか?

取材先固有の情報を盛り込んだ質問案の小分類

以下が、小分類の例になります。ここまで作成するには、クライアントからの事前の情報提供やオリエンテーションが必須になりますが、かなり精度の高い事例取材を実現する助けになります。特に登場人物が多い場合や、システム導入規模が大きな場合、長期にわたっている場合などは、このように「誰に聞くのか」「何を訊くのか」をブレイクダウンした小分類の質問案を用意できると万全です。

そして小分類の質問案は、多数の取材対象者に限られた時間で取材をする場合にも有効です。取材される側にとっても「ええっと、この質問は誰が答える?」といった迷いがなくなり、効率的な取材進行が可能になります。

  • お客様の課題<主にマネージャー様へ>
    従来の業務においてはどのような課題がありましたか
    ⇒特に△△の業務における生産性の低下について
    その課題の要因は何でしたか
    ⇒特にシステム面での課題について
    課題解決のためにいつ頃から検討を始めましたか
  • 製品・サービス選定の理由<主に導入ご担当者様へ>
    今回「〇〇(製品・サービス名)」を選定するに至った決め手はなんでしょうか
    ⇒要求仕様の中で特に重視された性能面について詳しくお聞かせください
    選定の際、他社の製品を検討されましたか。その際、当社製品が優れていた点は何でしょうか
    ⇒特に△△の機能が当社のアドバンテージですが、その点は評価されましたか
  • 導入効果<主に導入ご担当者様へ>
    製品・サービス導入後の定量的な効果について、具体的な数値でお聞かせください
    ⇒課題となっていた性能面では何倍の検証結果が出たでしょうか
    ⇒運用コスト面では従来比で何割程度削減できる見込みでしょうか
    同じく定性的な効果について、現場の声などをお聞かせください
    ⇒直感的なマウス操作についてお聞かせください
    その他、期待していた以上の効果があればお聞かせください
  • 今後の展望<主にマネージャー様へ>
    導入した「〇〇」について、今後の活用をお聞かせください
    ⇒今回は未活用の機能「△△」を今後活用されるご予定はありますか
    その他、貴社ビジネス展望についてお聞かせください

質問案は事例の複雑さや取材対象者の人数・リテラシーを考慮して柔軟に作成すべき

いかがでしょうか。肝要なことは、質問案は複雑にすれば良いという訳ではなく、「事例のスケール」に合わせた最適なレベル感です。つまり、取材する側にとっては原稿で抑えるべきポイントが絞り込まれ、取材される側にとっては訊かれることが明確になっていることが重要です。
また、あまりに取材質問案を作り込みすぎると、取材現場での自由な・新しい発言を阻害することにもなります。ですので、時には取材質問案を小分類まで作ったあと、あえて削ることもあります。

このあたりのさじ加減が、経験を積んだ事例ディレクターの腕の見せどころでもあります。

まとめ

・事例取材において質問案の設計は非常に重要
・事例全体のスケール感や取材対象者のリテラシーを考慮してバランスを取る
・大規模事例の場合はクライアントからの事前のオリエンテーションが有効