今年は、例年にも増して暑い夏となっていますが、台風の当たり年でもあるようです。程度の差はあれ、毎回、被害をもたらす台風は、日本人にとって厄介な存在である反面、国土の砂漠化や渇水を防ぎ、豊かな自然の維持に寄与するという側面もあるので「いたしかゆし」という存在ですね。
…ということで今回は、台風の単位を取り上げることにしましょう。
台風の目安は、10分間平均の風速を基準に「強さ」と「大きさ」で表されます。前者は最大風速をm/s(ミリ秒)で表し、後者は風速15m/s以上の半径をkm(キロメートル)で表します。詳しくは気象庁のサイトをご参照いただければ…と。
また、台風のニュースで「中心気圧は980ヘクトパスカル」などと伝えられますね。この値が小さいほど、気圧が低く、結果として勢力が強いことを意味します。このヘクトパスカルは、記号では㍱と記されますが、h(ヘクト)とPa(パスカル)を組み立てたものです。国際単位系(SI)における圧力の単位であるPaは、接頭辞のhを付けることで大きな値となるものを見やすく表現できます。このように、ある単位を接頭辞や別の単位と組み立て別の単位とすることができるものを「組立単位」といいます。長さの単位であるm(メートル)は、2乗すると㎡(平方メートル)という広さの単位に、3乗すると㎥(立方メートル)という容積の単位になりますよね。Paは、1㎡あたり、どれくらいの力がかかっているかを表します。そのままだと値が大きくわかりにくいことになるので、接頭辞のhを付けて100倍の単位としているのです。
さてこのパスカルという単位、人名に由来するものです。人間は考える葦であるのフレーズで有名なブレーズ・パスカルの功績を讃え圧力を表す単位の名前となっているのです。数学や物理学が好きな人にとっては、パスカルの三角形、パスカルの原理、パスカルの定理のほうがなじみ深いでしょうか。
フランスの哲学者であるとともに、自然哲学者(近代的物理学の先駆)、思想家、数学者、神学者でもあったというパスカルは、「早熟の天才」ともいわれ、39歳で亡くなっています。「美人薄命」などといわれますが、彼は、相対的に短い人生の中で、人一倍多くのことを学び、考え、成果を上げた人物といえるでしょう。圧力の研究を行うプレッシャーで寿命が縮まった…とは考えたくありませんね…。