5G時代のビジネスモデル「リカーリング」って?

「弊社としてはこのサービスをリカーリングのビジネスモデルとして展開したいと考えます」
「サブスクリプション型ではなく、リカーリングで収益を追求する理由は何ですか?」

などと言った会話が5GがらみでのIT事例取材、とくにビジネスモデルマターの取材では頻繁に出てくるだろう。なので取材側としては「えっとリカーリングって何ですか?」と言うような質問をしてはいけない。5G取材においては必須用語なので、概念を抑えておく必要がある。

5Gにおけるリカーリングのビジネスモデルとは、ある商品やサービス、ソリューションの販売後(以降本稿では”サービス”とする)、「そのサービスがどのようにユーザーに使われているか」「どこで使われたか」「どのくらいの頻度で使っているか」「消耗品交換や不具合の発生予兆はないか」など、逐一モニタリング、データ蓄積し、AIなどによる分析でさらなるサービスの付加価値向上・収益性向上を図る”データ循環型”のビジネスモデルを指す。

単なるサブスクリプション(月額契約など)の場合は、そのサービスを使おうが使うまいが、毎月固定の費用が発生することが多い。また変動する場合でも、例えば「5ギガを超えたら1ギガごと1000円」などの非常に簡単なルール内での変動に留まる。インクジェットプリンターの”インクを売って儲ける”ビジネスモデルもリカーリングの1つだが、「そろそろインクがなくなりますよ」というアラートが出るくらいで、販売した企業側からの積極的なアプローチ(悪い言えば知的な監視システム)はない。

5G時代のリカーリングのビジネスモデルは、個々の企業(あるいは個人)の顕在/潜在ニーズをデータから察知して、サービスそのものを進化させていくものだ。単に「使った分だけ」払うということではなく、サービスの「利用のされ方」をあらゆるデータから統合的に分析し、より顧客満足度を高めるサービスへと個別にカスタマイズしていくことができる。

リカーリングのエコシステムで用いられるデータは、Web上の取引データはもちろん、位置情報や時間帯情報、温度や高度、サービス利用母集団全体での利用傾向、さらにサービス利用者の”感情”まで、デバイスとテクノロジーの組み合わせにより無限の選択肢が考えられる。そして利用するサービスがPCやスマホ経由でなくとも、”モノ”そのものからIoTでデータを集めることができるようになる。極端な話、自販機で買った1本のコーラを追跡することだって可能だ。

5G時代のサービス提供者は「弊社のサービスはこの内容で業界最安値の月額●●円です」ではなく、「弊社のサービスはお客様に負担をかけることなく、お客様が望む形に進化し続けます。ですから、長く契約されるほど、便利で手放せないサービスになります」と話さなければならない。

5G×リカーリングビジネスモデルの事例取材においては、2セットで取材すべきと考える。1つはもちろん初期導入事例だ。リカーリングのサービスを導入したアーリーアダプター企業への取材である。

そしてもう1つは、「アフターリカーリング」の後期導入事例である。サービスを導入して半年、1年、リカーリング(循環するデータ)によって、顧客に提供されるサービスはどのように”進化”したのか?これは誰もが知りたいことだと思う。

当社は年間100本以上の導入事例制作をサービスとして提供しているが、「1度取材して終わり」ではなく、「リカーリングの2セット取材」の契約をさせていただき、事例記事そのものが半年、1年後に”進化”するサービスを考えている。Web公開記事なら容易に実現可能だろう。

最後にちょっと雑談。

取材側としての5Gへの期待としては「AI搭載ICレコーダーのリカーリングビジネスモデル」を期待する。取材中の音声がリアルタイムでクラウドに送られ、取材が終った時にはもう成形されたテキストデータとしてクラウドストレージにフィードバックされている。AIによるテープ起こしだ。こちらはIT系の取材が多いから、取材を重ねるごとにICレコーダーがその分野に「賢く」なっていき、テキストの精度が上がっていく仕掛けだ。

オリンパスさんかソニーさんあたりが、やってくれないかなあ。