【楽人楽酒 幻象学】アートを肴に

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コンテンポラリーアートをやってるS君が京橋で個展をやってるというので、久しぶりに彼とも飲みたいし会場に駆けつけました。彼は私と同じ年。40年以上作品を作り続けてますが作品のクオリティが下がる気配はありません。

気に入った一点を購入してしまいました。奥さんに怒られる(笑)。

近くの居酒屋でアートをサカナに一杯。ニューヨークでは70年代日本の「もの派」の作品が売れてるとのこと。ニューヨークで日本の作家が人気とはちょっと信じられません。というのはアメリカ現代美術はヨーロッパの影響から抜け出すための格闘の歴史だからです。そのため、かなりナショナリズムの気配が強く(鉱山王グッゲンハイムなどのお金持ちが、言葉は悪いのですが、評価が定まってない自国の作家の作品を買いあさり、確固としたアート市場をアメリカに創った?)、日本の現代美術がニューヨークで売れるとはちょっと信じられないのです。

アートビジネスの世界はアーティストだけで成り立つわけではなく、批評家が作品を言葉化する作業を通じてマーケットに受け入られます(画商は厩舎、作家は馬のたとえあり。さしずめ批評家は調教師か…笑)。日本の現代美術を研究する批評家もアメリカにいない訳ではありませんが、グッゲンハイム美術館シニア・キュレーターのアレクサンドラ・モンローぐらいしか頭に浮かびません。確か1994年に「Scream Against the Sky」展と称して戦後日本の現代美術を紹介してますが…間違ってたら御免なさい。この程度のイベントでアメリカのアート市場で人気になるとは考えにくいのです。アメリカのアートシーンで何が起こってるのか気にかかります。

しかしこの店、近くにある会社の社長に教えてもらったのですが魚はうまいし、とんでもなく安い。おまけに元高級割烹店だったらしく店構えも申し分ありません。

S君のアトリエは千葉の房総です。楽しい酒ですがS君が帰宅できなくなります。名残惜しいですがそろそろお開き。

しかし、アメリカのアートシーン気になります。後日、友人の画商兼美術批評家のMちゃんと会う機会があったので、飲みついでに早速聞いてみました。彼曰く「現在のアメリカアートシーンは元気がない。新しいムーブメントも有力な新人もなかなか現れないし、ニューヨークの画商連中もビジネス的に行き詰まってる。その時に目を付けたのが戦後日本の現代美術。日本の現代美術はアメリカでの評価も定まってなく、作品の値段も安いし、買いあさって高く売る。そのために最近は戦後日本の現代美術を紹介する展覧会もアメリカで多く開催されてるよ。」とのこと。ウーンそうか。

しかしアメリカのコンテンポラリーアートの世界はどうなってるのかしら。ジャクソンポロック、バーネットニューマン、マークロスコ、ステラ、ポップアート、ニューペインティング、世界のアートシーンをリードしてたのに。アートナショナリズムが成り立たない程、アメリカ世界は分断してるのかしら。

ちょっと酔いが回ってきました。
世界に目を向けて現代美術をウォチングしてみよう。