「新人・お砂糖、ディレクターへの道!」で、お砂糖さんが触れていますが、ディレクターは取材中に何をしているのでしょうか?ディレクターは単に同席しているだけではありません。約1時間の取材の間、様々なことに気を配りながら、取材のスムーズな進行と、後々の原稿の品質向上に気を配っているのです。今回はそんな、「事例取材ディレクターの現場」に迫ってみましょう。
ディレクターの仕事は取材の進行役
取材の現場には取材対象者を始め、クライアントの担当者、取材ディレクター、ライター、カメラマンなど通常5名以上の人が集まります。取材の時間は、一般的な事例取材であれば1時間。約60分です。
ディレクターは、主に以下のような流れで現場での業務を行います。
- 取材対象者と名刺交換
- 着座位置の指定と、カメラマンへの撮影指示
- 取材対象者の身だしなみチェック(ネクタイが歪んでいないかなど)
- 取材開始の挨拶
さて、以降は主にライターが質問し、取材対象者が応えるインタビュータイムになりますが、その間、ディレクターは何をしているのでしょうか。ただお地蔵さんのように黙っているのでしょうか。
いえいえ、違います。ディレクターはインタビューの成り行きを見守りながら、実に様々なことに気を配っています。一例をあげてみましょう。(重要度順)
取材前にすり合わせた質問内容から外れていないか
これは基本中の基本ですが、時に取材対象者が関係のない話題に“暴走”したり、ライターが、どうでもいい“余談”に走ってしまうことがあります。取材の主旨がぶれないよう、ディレクターはさりげなく割り込んで、インタビューの流れを補正します。また、“暴走”ではなく“聞き漏れ”も有りがちです。そんな時はライターに代わって「ちなみに〇〇についてはいかがですか?」とフォローします。
事例で最重要な定量的効果をメモする
例えば「生産性が60%向上」などという数値は、事例取材においては“黄金のキーワード”となり、大変貴重な発言です。それだけに、こうした効果数値については必ずディレクターはメモを取り、ライターの原稿と“照合”します。ライターが数値を漏らしていた場合には、原稿に書き足します。
時間配分に目を配る
これは“暴走”“余談”とセットで起こりがちですが、質問案の半分も進んでいないのに時間があと10分しかない・・・という事態は絶対に避けなくてはなりません。むしろ質問案の後半にこそ、肝になるトピックが詰まっているからです。時間配分がやばそうだな、と感じた時は、途中の重要度が低い質問をバッサリカットするよう、ライターに耳打ちしたり、時には「お時間も押してきたのでこの質問は後にして・・・」など、質問順序を逆転させます。
同席しているクライアント担当者に目を配る
これはちょっと高度なテクニックになりますが、時々、同席しているクライアント担当者を「チラッ」と見ます。笑顔だったり、平穏な表情であれば問題ありませんが、たまに“イライラした表情”“何かを相談したい目線を送ってくる”場合は要注意です。その場合はクライアントの意図しない方向に取材が進んでいる可能性が高いので、「ところで〇〇さん、何か補足質問はありますか?」とあえてクライアント担当者にふってみたり、状況が許せば、クライアント担当者のところまで行って、コミュニケーションを取ります。取材が終わってからの“なんで肝心のことを訊いてくれないんだ”的なクレームは避けたいからです。
カメラマンの撮影データをチェックする
ディレクターは、カメラマンの動きにも目を配ります。例えば3人の取材対象者がいた場合、AさんBさんに比べて、Cさんのシャッターが少ないな・・・などと分かる時があります。そんな時はカメラマンを手招きして、「もっとCさんも多めに撮影してください」などと、補正の指示を出します。もちろん、写真の写りそのものや、背景に余計なものが入っていないかなども素早くチェックします。
ディレクターが同席することで、取材の後の品質が変わってくる
このように、ディレクターは取材中に色々な視点で気を使いながら、スムーズな進行と事例原稿の精度・品質向上に貢献しています。また、ライターも、こうしたディレクターの“的確なアシスト”があることで、インタビューに集中できるのです。
まとめ
- 取材中のディレクターの重要な仕事は“暴走”や“聞き漏れ”を防ぎ、取材の流れを適切な方向に導くこと
- 取材対象者だけでなくクライアントの様子にも目を配り、空気を読むことが大事
- 原稿に重要な印象を与える写真データについても現場でのチェックを怠らない