導入事例の事件簿(1) なぜその事例はお蔵入りになってしまったのか?

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長く事例取材を続けていると、ごくまれにですが、驚くようなトラブルに遭遇します。今回はそんな「導入事例の事件簿」を少しご紹介しましょう。どんなトラブルの裏側にも原因あり。そこにはきっと貴社にも参考になるヒントがありますよ!

 

導入事例の「お蔵入り事件」発生。まさかそんなタイミングで・・・

過去取材した導入事例の中で一番衝撃的だったのが某大手国内ITベンダーのセキュリティ・ソリューション導入事例。取材を無事に終え、原稿が完成し、取材先のOKも出た後に、事例原稿が「お蔵入り」してしまったのです。

取材先はグローバルで事業を展開する機械メーカーでした。事例原稿が日本で完成した後、本国のマーケティング担当者が、「セキュリティに関する情報をここまで公開できない!」とNGを出してしまったのです。

当然取材費用はいただきましたが、関係者一同、口をあんぐりさせたのを覚えています。某大手国内ITベンダーにとっては、2カ月に近い時間が無駄になったことに加え、何よりも事例に協力いただいた顧客企業に対して、マイナスイメージになってしまいました。

 

アポイントにおける「関係確認の甘さ」が事件の火種になる

なぜそんな事態になってしまったのか。その要因をもう少し分析してみましょう。直接の原因は「本国の担当者がダメだと言った」ということですが、その手前に本当の原因がありました。当たり前と言えばそれまでですが、「事例の公開にあたっては、グローバルの承認が必要」という認識が大手国内ITベンダー側に欠けていたことが、最後のどんでん返しにつながってしまったのです。

実は事例制作においては、こうした、取材したい側と取材される側、そして取材される側の後ろにいる「取材には同席しないけど権限をもっている人々」など、多段階の意思疎通が必要な場合が少なくありません。この傾向は(取材側も、される側も)企業規模が大きくなるほど顕著です。

 

取材のアポイントでは、事前の情報共有はしつこいくらい念入りに

一例として、取材に関わる人物の相関関係を書き出してみましょう。以下は前述の大手ITベンダーの場合です。事例制作に関わる階層としては「ほぼマックス」です。
(もちろん、企業規模や事例規模が小さい場合には、プロセスはぐっとシンプルになりますが)

【取材する側】
宣伝部やマーケティング部(事例を作りたい人)

事業部(製品を開発している人)

営業部(製品を直接顧客に売った人・いわゆる営業担当者)☆

【取材される側】
〇〇部(製品を実際に使っている人)

情報システム部(製品の機能を検討し、導入した人)☆

経営企画部(課題解決のために製品導入を指示した人)

広報部(記事の内容を企業ブランドなどの視点からチェックする人)

グローバルの広報部(同上)

ありがちなのが、現場の担当者(☆印)どうしでは事例制作の話がトントン拍子に進んだものの、その後、いざ取材をしようとすると様々な承認障壁が待ち構えており、取材がとん挫してしまう(あるいは取材までに何カ月もかかり、取材の鮮度が落ちてしまう)・・というのは良くある話です。

 

事例の「お蔵入り」を回避するには

最悪なパターンは、現場の会話だけで取材まで進んでしまい、その後でNGになってしまうことです。顧客への事例取材の依頼にあたっては、顧客の窓口部門以外にどのような承認プロセスが必要か、確認は必須と言えるでしょう。

今回は「お蔵入り」という最悪のケースを紹介しましたが、実はここまでいかなくても、関係者間のコミュニケーションミスで、事例取材がギクシャクしてしまうケースは頻繁に発生しています。次回の「事件簿」では、「これはよくある!取材先に言っといたはずなのに全然伝わってなかった事件」をご紹介したいと思います。

 

まとめ

  • 事例制作では予想以上に多くの部門が関わる
  • 現場担当者だけでとんとん拍子に進んだアポイントは要注意!
  • 大手企業ほど承認は多段階。最初に確認しておかないとトラブルのもとに