一向に終わる気配のないコロナ禍。当初「やむを得ず」始まったオンライン取材もすっかり定着しました。オンライン取材は非常に効率的である一方で、「万能ではない」こともわかってきました。本稿では、長年の取材経験と照らし合わせて、オンライン取材・リアル取材双方の「メリット・デメリット」を考察します。
■効率的で劇的な省力化が可能なオンライン取材
まずオンライン取材のメリットを整理しましょう。「移動」を必要としないオンライン取材には以下のようなメリットがあります。
- 取材場所や移動時間を考慮しないでよいので取材側・非取材側を含めて調整がしやすい
- 当然ながら1つの取材に北海道と沖縄から参加できたりする
- 取材資料をプリントアウトする必要がない(自分のメモ用は別)
- 取材資料をプリントしすぎて紙を無駄にしたり、足りなくなって慌ててコンビニでコピーしなくてよい
- 資料を用いた説明はむしろオンラインの方がクリアで明確につたわる
- 取材全体を映像を含めて「録画」できるので「あの時なんて言っていたか」などが確認しやすい
- 細かなところで、「企業のビル1Fで待ち合わせて、受付をして、ゲストカードをもらって」という段取りが不要
- 同じく非取材側も「会議室の予約」「お茶の用意」などが必要ない
- 交通費や宿泊費がかからない
こうしてみるとメリットだらけですね。オンライン取材が普及するのも納得です。しかし一方でデメリットも数多くあります。
- ネット回線やカメラ・マイクの設定不具合が多発し「途切れる・何を言っているかわからない」
- ZOOM、Teams、GoogleMeet、WebEXなどオンライン会議システムが百花繚乱で、はじめてのシステムの場合に取材に集中できない場合がある
- 取材相手が複数になると、「表情や間合い」を読みながらの適切な切り返しが難しくなる
- 単なる成功事例取材ではなく、プロジェクトの裏側や人間関係など深い部分に踏み込む取材はオンラインだとお互いに「熱量」が伝えにくく、やりづらい
- 顔写真撮影で困る(良い表情の画面キャプチャを取るのも一苦労です)
■対面だからこそ情報量が高まるリアル取材
では次に、従来からのリアル取材のメリットを整理しましょう。これはほぼオンライン取材のデメリットの裏返しになります。
- 目の前に取材対象がいるので、相手の表情や反応を見ながら効果的なインタビューが可能になる(冗談も言える)
- 当たり前だが「途切れない」
- 意外に重要だがインタビュー前後の「雑談」で新たな情報が聴けることがある
- 同様に取材以外の仕事の話をできる(例:「今度事例だけではなくてカタログも頼めたりしませんか?」など)
- 取材場所に向かうことで「これから取材だ」といういい緊張が得られる
- 物理的に移動するので直前まで別の予定を入れようがなく「しっかり間を取れる」(集中を高めるために重要だと思います)
- 込み入った取材は対面でないと難しい
- 時々相手が黙り込み、熟考するような取材は対面でないと無理
- カメラマン同行でばっちり写真が撮れる
- 出張取材の場合、その土地のグルメや景観に触れることができ、視野と見聞が広がる
- 帰りの新幹線でビールが飲める
最後に、リアル取材のデメリットです。デメリットと定義するか微妙ですが、一応。
- 物理的に移動するので1取材で半日つぶれる。出張なら丸1日かかるので他の業務ができない
- 取材場所がわからず遅刻する可能性がある
- 車両で向かう場合に渋滞や事故に巻き込まれる可能性がある
- 重要な資料などを忘れても取りに戻れない
- 遠方の場合交通費が莫大になる場合がある
んー、デメリットはあまり思いつきませんでした。「時間がかかる」のは無駄ととらえるのか、普段いろいろな作業に追われているのを「強制中断」して、「多くをしないシンプルな時間」を手に入れるのかで、人によりメリット/デメリットの定義は変わると思います。
■結論:TPOでオンライン取材とリアル取材を使い分けよう
身もふたもない結論ですみません。どちらが上位ということではなく、「オンライン取材という選択肢が増えた」と捉えるのが正解だと思います。取材内容や参加メンバーに応じて柔軟に両者を使い分けましょう。