初めての導入事例。どうやってエンドユーザーを「口説く」か

Please念願の第一号ユーザーに無事納品になり、「これはぜひ導入事例を」と思う瞬間があります。そんな時、どんなアプローチをすれば、エンドユーザーは取材を快諾してくれるでしょうか?そこでは「タイミングの見極め」「前提条件のクリア」「ユーザーの説得」、そして「いくつかのドキュメント」が必要になります。今回は、はじめて導入事例を作る企業さまを想定して、ポイントをご紹介します。

 

導入事例を依頼するタイミングと前提条件

まず、事例取材への協力を依頼するタイミングです。これは、製品・サービスの種類により異なります。導入効果が即効性のあるものであれば、導入直後の取材も有効です。一方、「年間でのコスト削減」などを事例として見せたい場合は、導入からあえて時間をおいて取材する方が、事例としての説得力が増します。ただ、少し先の取材であっても「〇月ごろにぜひ取材をさせてほしい」と打診を早期にしておくことは必須になります。

前提条件とは、「そのユーザーが快く取材を受けてもらえる状態か」ということです。まず、製品・サービスの導入がトラブルなく行えていることは絶対です。そうでなければ、よい事例記事は望むべくも有りません。次に、「具体的な効果」が出ているかどうかです。IT導入事例では特に「何が〇%改善された」など、具体的な数字がないと、信用してもらえる事例になりません。こうした数値効果をユーザーが把握しているか、あるいは把握していなくても、お願いすれば取材までに調べてくれるか、ということは非常に重要です。

 

取材協力の説得に使えるフレーズ

タイミングと前提条件がそろっているならば、次は実際の取材協力の説得になります。導入時にやりとりしているユーザー担当者にまず、打診をします。導入事例に理解のあるユーザーであれば、すんなりと日程調整にすすむと思いますが、中には「導入事例って何?面倒くさいの?」という、向こうにとっても初めて、というケースは良くあります。

その際には、「導入事例はこういうもので、こういう目的で使います」という説明をするのですが、大事なポイントはここで「取材されるユーザーにとってのメリット」を付け加えるのを忘れないことです。「こういう目的で使います」というのは製品・サービスを納入したベンダー側のメリットであって、ユーザー側のメリットではないからです。

では、「導入事例のユーザー側にとってのメリット」とは何でしょうか。いくつかありますので、列記してみましょう。

 

導入事例のユーザー側にとってのメリット

まず、「ユーザー企業の認知度向上」が挙げられます。たいていの場合導入事例はベンダーのウェブサイトで公開され、紙のリーフレットは1000部単位で印刷され営業活動の中で配られます。導入事例の記事中では当然ユーザー企業の特長が紹介されますから、間接的にユーザー企業の認知度向上に貢献します。ウェブサイトに掲載される事例であれば、そこからのリンクによって、ユーザー企業のウェブサイトのアクセス向上にも繋がります。

次に「ベンダーとの関係性強化」があります。事例取材に協力するということは、製品・サービスベンダーにとっては「大変ありがたいお客様」なわけです。初めての導入事例であればなおさらです。事例に協力することでベンダーとの信頼関係が強固なものになれば、その後のサポートや保守もさらに万全な対応が期待できるでしょう。また、取材時には、製品・サービスへの改善要望や今後の機能追加の期待を直接ベンダーに伝えることもできるので、ユーザー企業のICT環境の継続的な改善にも役立つと言えます。

最後に「ユーザー企業社内での担当者のプレゼンス向上」というのがあります。そう書くとピンと来ないと思いますが、つまり「プロジェクト成功の証を社内に知らしめる」材料として、ベンダーが作る導入事例は最適なわけです。情報システム部やユーザー担当者の心配は「自分が選んだ製品・サービスが予定通りの性能を発揮しなかったらどうしよう」、これにつきます。導入事例取材を申し込まれるということは、製品・サービスが予定通りの効能を発揮したからにほかなりませんし、「事例取材を申し込まれた」「事例が公開された」ということは、誰の目にも明らかな成功の証となります。実際、できあがった事例のリーフレットを数百部、ユーザー企業にも納品するのはよくあることです。

 

取材許諾に必要ないくつかのドキュメント

ユーザー担当者が「それならいいよ、事例取材」と納得頂けたら、エンドユーザー社内で取材の稟議をスムーズに通すことが最後の砦になります。そこでは、いくつかのドキュメントが威力を発揮します。1つは「取材趣意書」です。これは、「かくかくしかじかで取材させてほしい。事例の利用用途はこれこれ。御社にもメリットがある。取材は1時間くらい」という取材概要をA4用紙1枚にまとめたものです。そしてもう1つは、このブログでも紹介した「質問案」です。

「取材趣意書」「質問案」があれば、たいていの場合社内稟議はスムーズに通り、いよいよ日程調整となります。

いかがでしょうか。導入事例は、取材のアポをとるのも1つのドラマです。導入事例を作れるということは、ユーザーの信頼を得ているという証でもあります。あなたの会社でも「初めての導入事例」やってみませんか?

 

まとめ

  • 初めての事例取材では「タイミング」「前提条件」「説得」「ドキュメント」の4点を確認
  • 「説得」フェーズでは、取材される側のメリットを忘れずに
  • 導入事例を作れる=ユーザーの信頼を得ている という証